day31:またね
喪主は母が務めた。 晩年の祖父は、ほとんど人の区別がつかない状態で施設で過ごしたこともあって、葬儀は内々に済ませるものだと思っていたけど、母は祖母のときもほとんど挨拶ができなかったからと言って、生前の祖父とそこそこの親交のあった人には声を…
5週目 ダサ税3ダサ税3,小説,文披31題
day30:色相
祖父が退院できる状態になったというので、病院と施設との間で打ち合わせをしてもらった。退院祝いにでも行ったほうがいいのかもしれないけど、まあ、祖父は僕のことわからないし。 でも、たぶんハルは覚えられている。少なくとも僕の認識では、祖父の記憶…
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day29:焦がす
いろんな夫婦は見るのだけれど、やっぱり職業柄、別れるかどうかの瀬戸際のふたりが圧倒的に多い。一方、どんなに思い合っていても「夫婦」になっていないふたりには、あまりお目にかからない。 もちろん、特定の属性のふたりは夫婦になれないという制度自…
5週目 ダサ税3ダサ税3,文披31題
day28:ヘッドフォン
ちょっと前に流行ったハワイアンパンケーキが、このカフェの売りらしい。確かに周りを見ると内装もどことなくハワイ風だ。とは言え私が頼んだのはエッグベネディクトで、パンケーキではないんだけど。妹はオムレツ。 卵を突き崩しながら、母のプレゼントの…
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day27:鉱物
妹のアパートの前に車をつけて電話したら、妹は電話を鳴らしっぱなしの状態で降りてきた。妹が助手席のドアを開けようとするのを見ながら私はコールを切り、助手席に置いていた鞄を後部座席に放り投げながら妹を迎えた。 妹がシートベルトをするのを確認し…
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day26:深夜二時
あまりに暑くて目が覚めた。 もう最近はエアコンを一日つけっぱなしなんていう家が多いのは知ってるけど、我が家はエアコンで体調を崩すタイプが大半なので、扇風機と寝ござが頑張っている。母の部屋だけはエアコンだけど。 もともと風の通りを重視した間…
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day25:カラカラ
やる、と決めたらすぐに手をつけないと、私はどんどん先送りにする。それがわかっていたから、私は妹との電話が終わると、ただちに母に欲しいものを聞いた。とは言っても、そのタイミングで聞けたのは、ちょうど母が洗濯物を干し終えて居間に来たからなんだ…
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day24:朝凪
大神くんが実害がないと言ったとおり、そのあと一ヶ月経っても、あの貸金業者からは連絡がなかった。妹に電話したら、妹のほうも大丈夫。「ていうかさ、私たちがちゃんと言われたとおりに相続放棄の資料送ってたら、裁判自体起きてなかったんやろ」 スピー…
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day23:ストロー
大神くんに書いてもらった書類に、言われた資料を同封して裁判所に送った。そしたら裁判所からまた手紙が来た。 字面からすると相手が裁判をやめたってことだとは思ったけど、私と妹とはそれぞれ意地とドジで裁判になった姉妹であるので、念のためと思い、…
4週目 ダサ税3ダサ税3,小説,文披31題
day22:雨女
私は食卓に、その大きめの封筒を置いて腕を組んだ。開封済み。宛先が妹の、同じセットがもう一つ。中の書類には、訴状、と書いてあった。 まあ、来るかもな、とは思っていたのだ。父にお金を貸していたという業者から督促状は届いていたので。でも私と妹は…
4週目 ダサ税3ダサ税3,小説,文披31題
day21:自由研究
店の前をいつもより早い時間に子どもたちが通る。なんだろうと思ったら、昼過ぎに来たお客さん(と、小学生の娘さん)とが、今日は終業式だった、と教えてくれた。 通知表がとてもよく頑張っていたので、今晩はごちそうらしい。その夕食の買い物前に店に寄…
3週目 ダサ税3ダサ税3,小説,文披31題
day20:摩天楼
今、店に飾ってあるパネルは、全部冴さんが撮った写真だ。人物が多いから、お客さんが目が合って居心地悪くならないように、高さやサイズを結構こだわった。 冴さんは僕より六つ年上。風景写真家を目指して渡米したけど、生活費稼ぎで撮っていたポートレ…
3週目 ダサ税3ダサ税3,小説,文披31題