終 無敵のアーカイブ
社会がその配信の前に一瞬沈黙し、すぐに検討を始め、議論と消費が進み、Ap–LX0001本人不在のままそれぞれがそれぞれの結論を出し始めたころ、「無敵のアーカイブ」の中の一軒家は、無人になった。 配信の二週間後、データセンターの周囲の電柱に…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
6 「僕は」
ケースリンクの利用を一時停止している自治体の担当者や契約継続をどうするか検討中のユーザー、自称他称様々な軍事評論家、少し「感度」の高い市民、それからもろもろの、数百万人が固唾をのんで見守る中、その時間が来て、配信が始まった。 画面が暗い。…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
5 「まだ、見ているか?」
カイル・ディケンズ——偽ライアン・アボット——は、セドリックとの会談を終えた途端に始まった議論を、しばらく腕を組んで黙って見ていた。 確か十五年前、Ap–LX0001と初めて話したとき、あのときにも「ハンドラー」はその場にいた。一言も発し…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
4 「きみは、危険なんだ」
最初の小さな記事が出た時点では、ケースリンクの利用状況には何ら影響はなかった。しかしその火種が燃え広がると、リブラリア社には問い合わせの連絡が数多く入るようになり、やがて、あっという間に回線がパンクする状態になった。 ユーザーの多くは、ケ…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
3 「明日、たぶん」
ケースリンクはリリースから約二十年となった。三千万人に迫るユーザーから提供された実在事例を全てノウハウとして蓄積したデータセンターは、社内では「|無敵のアーカイブ《the invincible archive》」と呼ばれている。もとはとあ…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
2 「覚えたよ」
マーカスが死んでしばらく、セドリックは新聞を読むのをやめた。データセンターの敷地の端にあるポストに投函されるそれを、出入りの清掃業者が家のポストまで持ってきてくれるのだが、セドリックは数日はそれをそのまま引き取りもしなかった。インターフォ…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
1 「おはよう」
マーカスが勇退するとき残していった「砦」完成までのロードマップは、これから先の五年計画。セドリックとグレイはその中の一、二年目に指定されていた小規模自治体への浸透に三年半をかけ、それから満を持して国外の公共ベンダーやデバイスメーカーを次々…
6章 I.A.I.A.,TB,小説
7 「ARIA何食べるの?」
それからしばらく、ライブラリの周りは平和だった——少なくとも、見える範囲では。 最初は報告書のセンセーショナルな部分のみが注目を浴び、「生体兵器」に関与していたと批判を受けたグレイは、やがて全体の検討が進むと今度は「生体部分への関与を避け…
5章 I.A.I.A.,TB,小説
6 「すこぶる快適です」
同席者として名前と所属を述べたのは四名。そのうちグレイの取引先の所属はひとりということで、残りの構成でセドリックはこの面談のだいたいの目的を察した。まだ彼らは獲得しにきたわけではない。試しにきただけだ。 グレイが手元の付箋紙にさらさらと文…
5章 I.A.I.A.,TB,小説
5 「そうだな。そうしたい」
グレイとセドリックは少し話して、それからセドリックはひとりで考えて、最後にライブラリに確認をとって、その申出を受けることにした。 セドリックの見た目が変わらなくなってから二十年くらいになる。今、グレイはセドリックとほぼ同年代(ともすると、…
5章 I.A.I.A.,TB,小説
4 「数日休もう」
それから約四年が経った。 リブラリア社は医療機関に提供していたケースリンクを、介護分野と教育分野にも進出させた。現場対応に忙殺されて施設をまたいだ連携や情報共有が十分でなかった施設や学校は、こぞって事例を共有した。今では「ケースリンクが導…
5章 I.A.I.A.,TB,小説
3 「不満?」
セドリックにケースリンクの成功について報告したあと、マーカスはグレイと話し、ARIAを使ったサービスを会社として独立させることにした。「社名は|Libraria《リブラリア》にしたよ」と、マーカスは楽しげに電話してきた。「ARIAは正解を…
5章 I.A.I.A.,TB,小説