6章

7 終幕

 退職日が決まった。それは「それまでBISECで経験した、すべてのこと」を忘れる日でもある。これまで退職した全員がその処理を受けた。倫理局に告発文を送って来たクロエ・ヘイデンも、それを処理したマーカス・レヴィンも、貸与政策によって固定バディ…

6 またね

 BISECはその借受人に、Ap-LX0001のコードネームを「|Lukas《ルカ》」として派遣した。もちろんハンドラーであるセドリック・ワイラーを帯同させて。 二人(形式的には一人と一つ)は、冷却ユニットや電気信号増幅ユニットなどの付属品…

5 次の居場所

 指定された日、個体運用局の面談に現れたセドリックは、渉外本部の職員がいない理由を問うた。個体運用局の担当職員二名は顔を見合わせると、片方が少し席を外し、数分後に渉外本部の職員と一緒に戻ってきた。 あの作戦の前、エヴァンズの横にいた女性職員…

4 備品の「使い方」

 セドリックは、もともとの予定より丸一日遅れてBISECに戻った。 捜査官室は閑散としていた。ただでさえ人員が減っていたところ、いつもいるAp型がことごとく不在なのだ。ナタリアもルークもいない。セドリックが今回の報告書を書いていると、アーロ…

3 ある終わり

 最寄りのインターチェンジで降りて、セドリックは路肩に車を寄せた。淡い期待ではあったが、明確になってしまうとやはり、落胆はした。 持ち出しの予定時間をもうすぐ過ぎる。セドリックは延長申請をせず、ただ本部に戻るのもやめて、新しい行き先をナビに…

2 供花

 それからセドリックは、ほとんどの時間をブンコの部屋で過ごした。彼が起きている間も、寝ているときも。ハネダが診察に来いと言っても、行かない。ブンコが「僕が寝ている間に行ってきたら」と三回言って、ようやく聞いた。 食事もそうして、ブンコが寝て…

1 辞書、はじまりの本

 目を覚ました時間は、まだ早朝とも言えないほどの時間だった。もうしばらくしたら定時巡回にアイザックが来るはず。 周囲に置かれた様々な医療機器は、ほぼ寸分の狂いもなく定期的に音を鳴らしている。それを数えながらデジタル表示の時計を睨んでいたら…